運送業の賃金がどのような仕組みで決まっているのか、気になっている方もいるのではないでしょうか。
「運送業は賃金が低い」というイメージを持っている方もいるかもしれませんが、実際には賃金の構成や求人票の見方を理解することで、より具体的に自分に合った求人を見極められるようになります。

この記事では、運送業の賃金の仕組みと、求人票をチェックする際のポイントについて解説します。
- 運送業の平均賃金と賃金構成の基本(基本給・歩合給・各種手当)
- 求人票で賃金体系を見分けるチェックポイント
- 職種による賃金構造の違いと年収アップのためにできること
1.運送業の賃金はどう決まる?基本給・歩合給・各種手当の仕組み
運送業の賃金は、毎月決まって支払われる部分と、働いた実績に応じて変わる部分の組み合わせで成り立っているのが一般的です。
全日本トラック協会の調査(2025年度版)によると、男性運転者の1か月平均賃金は37万4,900円、年間賞与の1か月平均額を加えた月額では42万3,300円でした。
この金額は令和7年5〜7月に支給された賃金の平均で、会社や車種によって幅があります。
まずは、賃金を構成する基本給・歩合給・各種手当それぞれの役割を整理しておきましょう。
基本給と歩合給の考え方
運送業の賃金は、毎月固定で支払われる「基本給」と、走行距離や配送件数、売上等に応じて変動する「歩合給」を組み合わせるのが一般的です。
全日本トラック協会の調査(2025年度版)によると、男性運転者の月額賃金は固定給が58.4%、歩合給や時間外手当などの変動給が41.6%という構成でした。
基本給の比率が高い会社は収入が安定しやすく、歩合給の比率が高い会社は頑張り次第で収入を伸ばしやすい傾向があります。
どちらが合うかは、安定を重視するか、成果を収入に直結させたいかによって変わってくるでしょう。
乗務手当・無事故手当など各種手当
基本給・歩合給に加えて、乗務手当、無事故手当、深夜手当、危険物手当などの手当を用意している会社もあります。
全日本トラック協会の同調査では、男性運転者の変動給のうち時間外手当が50.9%、歩合給が41.4%を占めており、無事故手当や精皆勤手当などは「その他」に分類されています。
手当の有無や金額は会社によって差があり、月々の収入に一定の影響を与えます。
求人票を見る際は、基本給だけでなく、どのような手当が付くのかも確認しておくとよいでしょう。
参考:公益社団法人全日本トラック協会「2025年度版 トラック運送事業の賃金・労働時間等の実態(本編抜粋)」(第3表・第5表・第6表)
2.「運送業は賃金が低い」と言われる背景
運送業は、他の業種と比較して賃金が低いというイメージを持たれることがあります。
その背景には、労働時間の長さや収入の変動しやすさがあると考えられます。ここでは、2つの観点から整理します。
長時間労働になりやすい実態
トラック運転者は、全産業の平均と比べて労働時間が長くなりやすい傾向があるとされています。
運転だけでなく、荷待ちや荷役といった時間が発生することも、拘束時間が延びる要因の一つといわれています。
年収の額面だけを見ると一定の水準に見えても、働いた時間あたりで考えると割安に感じられる場合があり、こうした点が「賃金が低い」というイメージにつながっていると考えられます。
厚生労働省のポータルサイトでは、トラック運転者の年間労働時間や年間収入額を全産業と比較した統計が公開されています。
参考:厚生労働省「統計からみるトラック運転者の仕事」自動車運転者の長時間労働改善に向けたポータルサイト
歩合給の比重と会社・車種・地域による差
歩合給の比重が高い給与体系では、月ごとの仕事量によって収入が変動しやすくなります。
また、賃金の水準は会社や車種、勤務地域によって幅があります。全日本トラック協会の調査(2025年度版)では、男性運転者の1か月平均賃金は、けん引が42万3,800円、中型が33万6,000円でした。
地域別でも関東が38万2,400円、東北が31万2,100円と差が見られます。
一律に「低い」と言い切れるものではないため、イメージだけで判断せず、実際の求人票の内容を確認することが大切です。
賃金水準は会社や車種、地域によって幅があるため、自分の希望条件ではどのくらいの収入が見込めるのかを知りたい方は、求人の相場に詳しい人に聞いてみると不安を解消しやすくなります。
参考:公益社団法人全日本トラック協会「2025年度版 トラック運送事業の賃金・労働時間等の実態(本編抜粋)」
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3.求人票で賃金体系を見分けるチェックポイント
求人票を見る際は、以下のようなポイントを確認しておくと、実際の収入をイメージしやすくなります。
- 基本給と歩合給の割合、または「固定給」「歩合給」いずれの体系か
- 想定年収・月収のモデルケースが具体的に示されているか
- 各種手当(乗務手当・無事故手当・深夜手当等)の内容
- 賞与・退職金の有無
- 昇給の仕組みや実績
これらの情報が求人票に明記されていない場合は、面接の際に具体的に質問しておくことをおすすめします。
基本給・歩合給の割合と手当の内訳を確認する
まず確認したいのは、月給のうち固定で支払われる金額がいくらかという点です。
「月給30万円以上」といった表記でも、基本給・歩合給・手当の内訳によって収入の安定度は変わります。
あわせて、固定残業代(みなし残業代)が含まれていないかも見ておきましょう。
厚生労働省は、固定残業代制を採用する場合、固定残業代を除いた基本給の額、対象となる労働時間数と金額等の計算方法、超過分の割増賃金を追加で支払う旨を、求人票などに明示するよう求めています。
参考:厚生労働省「固定残業代を賃金に含める場合は、適切な表示をお願いします。」
モデル年収・賞与・昇給は前提条件まで確認する
想定年収や月収のモデルケースは、収入をイメージするうえで参考になります。
ただし、モデルケースがどのような勤務日数や残業時間、歩合の実績を前提にしているかによって、実際の金額は変わる場合があります。
入社何年目の例なのか、手当や賞与を含む金額なのかも確認しておくと安心です。
賞与・退職金の有無や、昇給の仕組みと実績は、長く働くほど収入に差が出やすい項目です。
記載があいまいな場合は、支給の条件や過去の実績を面接で尋ねてみるとよいでしょう。
4.職種によって異なる賃金構造|トラック・タクシー・バスの違い
運送・旅客業界の中でも、職種によって賃金構造には違いがあります。
タクシー、バス、トラックのそれぞれで基本給と歩合給のバランスが異なり、トラックドライバーの場合も、地場配送か長距離配送かによって傾向が変わります。
タクシー運転手とバス運転手の賃金の傾向
タクシー運転手は歩合給の比重が高い傾向にあり、成果が収入に直結しやすい一方で、収入の波が大きくなりやすいという特徴があります。
厚生労働省の職業情報提供サイト(job tag)でも、タクシー運転手については、基本給などの他に売上高に応じて給料が支払われる歩合制度を採用しているところが多いと紹介されています。
一方、バス運転手は比較的、基本給の比重が高く、安定した収入を得やすい傾向があるとされています。
成果を収入に反映させたいか、毎月の安定を優先したいかが、職種選びの一つの目安になるでしょう。
参考:厚生労働省 職業情報提供サイト(job tag)「タクシー運転手」
地場配送と長距離配送での違い
特定のエリア内を走る地場配送のドライバーは、比較的規則正しい勤務形態になりやすく、基本給が中心の給与体系である場合があります。
一方、長距離配送は走行距離や拘束時間が長くなる分、距離に応じた手当や歩合が上乗せされ、収入が高くなりやすい傾向があるとされています。
なお、全日本トラック協会の調査(2025年度版)では、長距離手当を含む「運行手当」は歩合給の一部として集計されています。
どちらが向いているかは、生活リズムや働き方の希望によって変わってくるでしょう。
安定した収入と成果に応じた収入のどちらを優先するか、どの職種が自分に合うのか決めきれない場合は、希望する働き方を伝えたうえで選択肢を絞り込んでいくのがおすすめです。
参考:公益社団法人全日本トラック協会「2025年度版 トラック運送事業の賃金・労働時間等の実態(本編抜粋)」
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5.年収アップを目指すためにできること
運送業で年収アップを目指す方法は、大きく分けて「資格を取得する」「働き方や役割を変える」の2つが考えられます。
自分の希望する働き方と照らしながら、無理のない範囲でキャリアを考えていくとよいでしょう。
上位免許・関連資格を取得する
大型免許やけん引免許といった上位免許を取得すると、運転できる車両の幅が広がります。
全日本トラック協会の調査(2025年度版)では、男性運転者の1か月平均賃金はけん引が42万3,800円、大型が39万5,300円で、中型の33万6,000円を上回っていました。
また、危険物取扱者やフォークリフト運転技能講習といった関連資格の取得も選択肢として挙げられます。
資格手当の対象になるかどうかは会社によって異なるため、求人票や面接で確認しておくとよいでしょう。
参考:公益社団法人全日本トラック協会「2025年度版 トラック運送事業の賃金・労働時間等の実態(本編抜粋)」
働き方の変更やステップアップを検討する
資格の取得に加えて、働き方そのものを見直す方法もあります。
たとえば、長距離ドライバーへのキャリアチェンジは、距離に応じた手当や歩合が加わる分、収入を伸ばす方法の一つとされています。
また、運行管理者などのマネジメント職へステップアップする道もあります。
ただし、長距離配送は拘束時間が長くなりやすく、管理職は業務内容が運転から大きく変わる点に注意が必要です。
収入面だけでなく、生活リズムや体力面、将来の働き方も踏まえて検討するとよいでしょう。
今の経験や資格をより高く評価してくれる会社に移ることも年収アップの手段の一つなので、収入と生活リズムのバランスを含めて今後の進め方を考えてみましょう。
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6.よくある質問
運送業の賃金について、押さえておきたい疑問をまとめました。
- 運送業に賞与や退職金はありますか?
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会社によって異なりますが、賞与や退職金制度を設けている会社もあります。求人票に記載がない場合は、面接等で確認しておくと安心です。
- 未経験でも歩合給で十分な収入を得られますか?
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未経験のうちは業務に慣れておらず、歩合給の実績を積みにくい傾向があります。
会社によっては、研修期間中の保障給を設けたり、固定給の比率を高めに設定したりしている場合もあるため、求人票で確認しておくとよいでしょう。
なお、会社に雇用されて働く場合は、歩合給制であっても、労働時間に応じた一定額の賃金を保障することが労働基準法で定められています。
参考:自動車運送事業者の働きやすい職場認証制度(国土交通省指定 認証実施団体:一般財団法人日本海事協会)「トラックドライバーの完全歩合給制は違法?労働基準法上のチェックポイントを弁護士が解説」
7.運送業の賃金の仕組みを理解して自分に合う求人を見つけよう
運送業の賃金は、基本給・歩合給・各種手当の組み合わせで構成されており、会社や職種、勤務形態によって仕組みや水準に幅があります。

「賃金が低い」というイメージだけで判断せず、求人票の基本給・歩合給の割合や手当の内容を具体的に確認することが、自分に合った働き方を見つける近道になるでしょう。
